地域に求められるクリニックづくり
〜ヘルスプロモーションの視点からの探求〜 グローバルヘルスコミュニケーションズ 代表 東京大学大学院医学系研究科健康社会学研究室 順天堂大学ヘルスプロモーションリサーチセンター 蝦名玲子(えびな りょうこ) 背景 主な病気や死の原因が日常生活のなかにある時代に対応→国民健康づくり運動「健康日本21」 (1)健康日本21 ワーキング会議に出席していますか? ヘルスプロモーションの考え方が基になっている (2)ヘルスプロモーション ヘルスプロモーションとは、人々が自らの健康をコントロールし、改善することができるようにするプロセスである(WHOオタワ憲章、1986) ヘルスプロモーション概念の生みの親として知られるイローナ・キックブッシュ博士(エール大学)はヘルスプロモーションの5原則を提示しているが本シンポジウムではそれを、1.治療優先の生活をおくる全ての人々(患者・家族・医療従事者)を対象、2.健康の決定要因を重視、3.多様で補完的なアプローチの組み合わせ、4.患者の主体性、5.医療従事者の役割重視、と病院というセッティングに適応する形にアレンジし、そのうえで、冒頭の「行きたくてたまらない病院環境をつくるにはどうしたらよいか」という問いの答えを探求していこうと思う。 1.治療優先の生活をおくる全ての人々を対象 患者 家族 医療従事者: バーンアウト(燃え尽き症候群)→医療過誤の増加、有意味感の低下→経営的なデメリット(経営者の 想いとスタッフの態度の差)、社会的なデメリット(アメリカにみる医療従事者の数の減少) 2.健康の決定要因を重視 (1)健康とは? @ WHO(世界保健機関)の定義 A パッチ・アダムスの定義 B 図解健康生成論 (2)パッチ・アダムスの医療観 @ なぜ、1960年代に初めて、「病院に笑いを!」という活動をしたのか A パッチ・アダムスの3ステップ・アプローチ (3)なるほど笑い学 (4)「ふれる」ことの持つ力 @ 「ふれる」ことの大切さ A 「ふれる」ことへの恐れ (5)パッチ・アダムスから学ぶこと 健康に関わる専門家は、総合的な健康を得るためにプロモーションしなければならない点があれば、どのような角度からでもアプローチしていくことが大切 3.多様で補完的なアプローチの組み合わせ (1) パッチ・アダムスの夢の病院 (2)クリニクラウン財団 @ 成功の秘訣 A クリニクラウンの生みの国オランダの病院システム B クリニクラウンになるためのポイント 4.患者の主体性 病気の原因が日々の生活の中にある→一人ひとりの意識を高めることが大切→ヘルスコミュニケーション能力を高めよう (1)ヘルスコミュニケーション 人々に、健康上の関心事についての情報を提供し、重要な健康問題を公的な議題に取り上げ続けるための主要戦略のこと(WHO) (2)こういう人が来院したらどうしますか? (ロール・プレイ) 57歳男性 身長 170cm 体重 130kg BMI 44.9 《BMI=体重(Kg)÷身長(m)÷身長(m)》 自営飲食業→最近景気が悪い→ストレスがたまると食べる、 余るから食べる、運動する時間的・精神的余裕がない 5.医療従事者の役割重視 (1)日本の特徴(WHO,2002) 世界一の長寿国 高齢者の自殺率の高い国 自殺率は世界で11位 OECD加盟国の中で2位 G7の国の中で1位 自殺者のほとんどは、自殺1ヶ月以内に、漠然とした身体的訴えをもとに精神科以外の診療を受けて いる→うつ病であることが見落とされ、十分な治療を施されないまま経過→自殺 (2)医療従事者に求められていること お勧め文献 蝦名玲子. (2000,2003). 心からのお見舞い. パッチ・アダムス著“House Calls”翻訳. 英潮社(購入先→03-3263-1641,値段1600円+税) 無料で患者の往診を続け、映画の主人公にもなった米国版「赤ひげ」医師による「お見舞い学入門」書。訪問者のちょっとした心づかいがどれだけ患者にとって心強いか。ただのガイドブックではなく、日本でも注目されるようになった患者の「生活の質」を考える視点を豊かにしてくれる。(日本経済新聞夕刊「BOOK」より) 引用・参考文献 Kickbusch(1997). Health Promoting Environments-next steps. Australian and New Zealand Journal of Public Health. Supplement, July. 蝦名玲子(2002).ユーモアと健康、そして平和〜Dr.パッチ・アダムスの魅力とその挑戦〜.看護学雑誌66-2. World Health Organization (1986). Ottawa Charter for health Promotion. WHO/HPR/HEP/95.1. Geneva 蝦名玲子(2004).臨床道化師がやってきた 保健医療現場での楽しい雰囲気づくり.公衆衛生情報3&4. フィリス・K.ディヴィス著、三砂ちづる訳(2003).パワー・オブ・タッチ.メディカ出版 蝦名玲子(2004).生活習慣の改善をじょうずに促すつながるためのコミュニケーション.公衆衛生情報3 蝦名玲子(2004).笑いで人を惹きつけよう “パッチ・アダムス流”戦略.健康生成志向で考える あの人の口説き方・落とし方1.保健師ジャーナル60-1. 蝦名玲子(2004).「そこに行きたい」と思われる環境をつくろう.健康生成志向で考える あの人の口説き方・落とし方9.保健師ジャーナル60-9. |